夢をかなえたトマトのスカーレット
トマトは、上品な紫色のナスの一族でした。
でも、トマトはどうしても、真っ赤な色になりたかったのでした。
だから、紫色のナスの一族とは、色が違うのです。
真っ赤に実ったトマトは、そんな歴史を誇りにしていました。
そして、大喜びの歌声が、朝日の中に聞こえてきます。
♪~♪
お日さま 大好き トマトちゃん
大和の空の 日の丸みたいと いわれたの
お顔も 心も 真っ赤にもえる
お日さまに あこがれ続けて 実ったあたし
だから甘い あまーい スイート赤なすトマト
あたしの赤は 夢かなえる色
若くなれる 美しくなれる
かじって 食べて お日様ぼたもち
もちもちお肌も 夢じゃない
トマトはね 美人づくりの 玉手箱
大和なでしこ トマトから
♪~♪
では、トマトのご先祖であるスカーレットが生まれた頃のお話をしましょう。
暖かなある日、スカーレットは小さな芽になって、地面からヒョッコリ!飛び出しました。
「キャー、まぶしい!」
小さな芽のスカーレットは、さんさんと明るい光に、思わず倒れそうになりました。
これまで暗い土の下にいたので、明るい世界にびっくりです。
それでも、スカーレットは、勇気を出して大きな青い空を、見上げてみます。
土の上の世界に出て、生まれて初めて見えたのは、高い高いお空で明るく光るまん丸のきれいなお日様でした。
でも、スカーレットは何も知らないので驚いてばかりです。
「うわー、すごい!すごい!」
「あれは、なんだろう?」
それを見ていると、小さな芽の体は暖かくなってきます。
スカーレットは、なにかを考えながら、お日様だけをずっと見続けます。
目の前で、まん丸の明るい光は、少しずつ少しずつ、お山の向こうへゆっくり歩いていきます。
「どこへ行っちゃうんだろう?」
その時、気がつきました。
世界がうす暗くなって、これまでいた土の中みたいになっていくのです。
でも、明るく光るまん丸が、だんだん赤くなっていくではありませんか。
やがて、丸い光はお山の上にすわった時には、真っ赤に!なったのです。
「うわー、きれい!きれい!」
「すてき!すてき!うわー!」
真っ赤な夕陽を見て、思わず大声で叫んだので、離れた所にいた野菜さんたちがいっせいにスカーレットをにらみました。
そこで、スカーレットは、そっと神さまだけにお話しします。
「神さま、わたしががんばって明るい世界に出ることができたなら、願いを一つ聞いてあげよう!と言ってくださいました。」
そう、スカーレットは光の世界に飛び出してから、神さまに何を願うかを考えていたのでした。
一日中、お日様を見ながら感動していたのです。
赤いまん丸の姿で、世界を明るくして皆を幸せにするお日様に、心から憧れていました。
だから、トマトのスカーレットの願いは、ただ一つです。
それは、憧れのお日様のように真っ赤なまん丸の実をつけて、皆を元気にして幸せにしたい!ということです。
願いは、神さまによろこばれて聞き届けられたのでした。
そして、暑い夏になりました。
トマトのスカーレットは大きく元気に成長しています。
その緑色の腕には、真っ赤なお日様のような丸い実が、いっぱいついています。
スカーレットは、憧れのお日様とそっくりな実を持てたのでした。
赤い実を見て、食べている人さま皆は、幸せそうです。
こうして、紫色のナス一族から出てきて、赤くなるという願いがかなったスカーレットは、とてもうれしくて、毎日が幸せでした。
今日も憧れのお日様を眺めては、ほんわかと暖かな気持ちになり、畑の中で笑顔がこぼれています。
そして、元気に歌うのでした。
♪~♪
お日さま 大好き トマトちゃん
大和の空の 日の丸みたいと いわれたの
お顔も 心も 真っ赤にもえる
お日さまに あこがれ続けて みのったあたし
だから甘い あまーい スイート赤なすトマト
あたしの赤は 夢かなえる色
若くなれる 美しくなれる
かじって 食べて お日様ぼたもち
もちもちお肌も 夢じゃない
トマトはね 美人つくりの 玉手箱
大和なでしこ トマトからー
♪~♪